皆さんは映画『アリオン』をご存じだろうか。
1986年の作品でもう40年近く前になるので、知らない人も多いかもしれない。
そういう筆者も、つい最近まで作品名はおろか、観たことさえ忘れていた。
唯一覚えていたのは、田中真弓さん演じるキャラクターのシーンだけだった。
ものの数秒にしかならないそのシーンは20年以上経った今でも、強烈な印象で筆者の記憶に残り続けている。
というわけで今回は、筆者が10代の頃に観た「アニメ劇場」と映画『アリオン』の思い出を綴ってみようと思う。
「アニメ劇場」は夢のような時間だった
1990年代、筆者が10代のころ、NHK衛星では「アニメ劇場」という番組があった。
春休みや夏休みなど学校の長期休暇中にのみ出現する番組で、アニメ映画やOVAが放映されていた。
まさに夢のような時間だった。
午前中の9時から12時ころまでの時間帯だったと思う。
自分が知らない、観たこともない、名作アニメを無料で!!しかもノーカット!CMなし!で観ることができたのである。
今のようにサブスクはないし、かといってソフトは高価すぎて手が出せない。。
”アニメ作品に来てもらわないと観れない”っていう感覚だった。
「アニメ劇場」で『ぼくの地球を守って』や『トップをねらえ!』を知った
『ぼくの地球を守って』
『ぼくの地球を守って』は繰り返し放映されていた。
観る度に映像クオリティの高さにくぎづけだったし、男性キャラクター同士のキスシーンにドギマギした。
そして、菅野よう子さんを知ったのは、この作品のエンディングテーマである『時の記憶』がきっかけだった。
【余談】『時の記憶』の、音量の記憶
蛇足だが、『時の記憶』の始まりは囁くような歌声だけで、しばらくの間は楽器の演奏がない。
少しずつ楽器が増えていき、音量も大きくなっていくのだが、直前のアニメ本編と同じ音量のままだとやや聞こえづらい。
そのためエンディングが始まると毎回のように、”あれ?、おかしいな。聞こえないなぁ・・”と思ってボリュームを上げていた。
しかし、終盤の2分40秒くらいから突如としてオーケストラ演奏っぽくなって曲が大いに盛り上がる。
2分50秒台がピークである。
毎回そこでびっくりして、慌ててボリューム下げてました。
毎回のようにです!
学習能力ないです。
でも、いい思い出ですねぇ。
『トップをねらえ!』
「アニメ劇場」で『トップをねらえ!』を観たのは1度きりだったけど、ウラシマ効果について初めて知って、アニメを見ながら知的好奇心を大きく刺激されることが本当にほんとうに楽しくて、夢中になった。
ラストシーンでは声を出して大泣きした。
OVA(オリジナルビデオアニメーション)リリースから32周年の2020年11月と、その3年後、35周年の2023年5月に劇場上映されたので、もちろん2回とも観に行った。
ラストシーンはしっかり覚えていたけど、やっぱり泣いた。
動画と、動画に合わせて流れる音楽のタイミング、声優さんの演技、全てが完璧で心を揺さぶられる。
映画館なので周りに他の鑑賞者がいる中、号泣を我慢するのが大変でした
『アリオン』も観ていた
タイトルもストーリーも覚えていなかった
前置きが長くなってしまったが、ようやく『アリオン』のお話に入る。
「アニメ劇場」で放映された作品の1つに『アリオン』もあった。
あったのだが、筆者は1つのこと以外、作品名のことも、ストーリーも、どの声優さんが出演されたのかも、全く覚えていなかった。
ストーリーは覚えていないというより、理解できていなかったという方が正しい。
おそらく、ギリシャ神話をモチーフにしたストーリーのため、当時の自分には理解が難しかった。
なお、キャラクターにはゼウス、アポロン、プロメテウスなどがいる。
基礎知識があれば少しは理解できていたかもしれない。
1つだけ覚えていたこと
そんな筆者が1つだけ覚えていたことは、田中真弓さん演じるキャラクターのシーンであった。
作品名も何も覚えていないのに、そのシーンだけは強烈に印象的で、今でも頭の中で再現できる。
そして毎回のように目頭が熱くなる。
当時はそのシーンでやっぱり大泣きしていた。
ももちゃん、泣いてばっかりだねぇ・・
記憶がよみがえったきっかけは『漫勉』だった
田中真弓さん演じるキャラクターのシーンと、作品名が結びついたきっかけは、2021年の漫勉だった。
2021年6月に放映された漫勉で、安彦良和さんがご出演されていた。
安彦さんは『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインと作画監督で大変有名な方である。
漫勉の中で浦沢直樹さんが、”『アリオン』の頃からナントカカントカでしたよね”などと、『アリオン』という作品名を話題に出していた。
その会話中に映った漫画『アリオン』の絵柄に、”アレ?”と思ったのである。
わたし、『アリオン』の映画を観たことあるかも。
確か安彦さんっぽい絵柄だった。
あれ~、田中真弓さんのあのシーンってもしかして。。
『THE ART OF アリオン』を読んでみた
浦沢直樹さんの言葉をきっかけに、記憶の扉が少しずつ開いていった。
最初はうすーく隙間が空いているだけだったのが、どんどん間が広くなって明るくなっていった感じだった。
さっそく映画版アリオンに関する本を読んでみたところ、田中真弓さんがご出演されていて、キャラクターの名前は”セネカ”だった。
そして、筆者が唯一覚えていたシーンも存在したのである。
記憶の中のシーンを再現
セネカは10代前半くらいの人物である。
物語の序盤で主人公アリオンと出会い、一緒に旅をする。
終盤近くになり、敵の攻撃でセネカが怪我をしてしまい、それをアリオンが手当てしようとした時だった。
手当を頑なに拒否するセネカに触れたアリオンが気が付くのである。
セネカが”男の子”ではなく、”女の子”であったことに。
戦場で生き延びるため男の子のふりをしていたセネカ。
アリオンと一緒にいる中で、アリオンに片思いをし、アリオンが助けようと一途に思い続ける女の子(レスフィーナ)に妬いていた。
早くその子のとこに行ってやれよ!
行けったら!!
ふてくされてそう言うセネカに対してアリオンは、
セネカ、そこを動くんじゃないぞ!!
と言って素早く立ち上がり、きれいな身のこなしで剣を操り敵をあざやかに倒しながら、あっという間に見えなくなった。
その後ろ姿を見てセネカは、直前まで強がって男の子ぶっていたのに、すっかり恋する女の子の顔になり、顔をぱあああと嬉しそうに輝かせて、嬉しそうに涙を流しながら、
カッコいいぜ、、ちくしょう・・・!
と悔しそうに、でもうっとりしながらつぶやいたのである。
筆者にとって『アリオン』のヒロインはセネカ
思い出しながら、やっぱり感動が蘇ってきます。
鼻の奥がつーんとします。。
筆者の中で、アリオンのヒロインは間違いなくセネカである。
”カッコいいぜ、ちくしょう”の中にいろんな想いがつまっていて、胸を打つ。
こんな短い台詞なのに何度聞いても感動するのは、もう田中真弓さんの演技力が素晴らしいの一言に尽きる。
好きな人に好きになってもらいたいけど、もう難しい。
でもやっぱりカッコいい、憧れる。
好きな人に愛されてるあの子が羨ましい。悔しい。
でもやっぱりカッコいい。
さいごに
こういった感動の記憶というのは、何年たっても心の中に居続けてくれて、穏やかな気持ちにさせてくれる、天然の精神安定剤のようなものである。
本当にすばらしい。
やっぱりアニメって最高。
田中真弓さん最高。
というわけで、アマプラにあったからアリオン観ます!!
20年ぶりくらいになるのかな?
ちなみに、実は安彦良和さん、映画館で筆者のすぐ後ろの席に一瞬だけ座ったことがあるのである!!
それはまた別の機会にでも!